文字どおり、“多読”とは「たくさん読むこと」、“多聴”とは「たくさん聞くこと」です。より具体的には、やさしいと感じる英語の本を、辞書を使ったり、一言一句和訳したりせず、全体の内容把握を目的にどんどん読むのが“多読”。同様に、やさしめの英語音声を、一つひとつの単語の細かな意味は気にせず、全体の流れをつかみながらどんどん聞くのが“多聴”です。
つまり、やさしい本から始めて、たくさんの本を読んで聞くことで、長文読解力、リスニング力、語彙力などをアップさせよう!という英語学習法が多読・多聴です。
以下では、ここ数年で特に注目を集めている、子ども向けの多読・多聴の基礎知識について簡単にお話しします。
中学校や高校でも取り入れられている「多読・多聴」
大人のやり直しから、子どもの大学入試・検定対策へ
もともと多読・多聴は、英語が苦手な大人や大学生の“やり直し”学習法の一つとして日本では始まりました。しかし近年、おもに大学入試対策や進学準備目的で、私立の進学校や大学付属校などを中心に、多読・多聴を取り入れる中学校や高校が増えています。
さらに最近では、小学生のうちに、高校卒業レベルの英検®2級に合格したり、TOEIC®で大人顔負けの高得点を出したりしている、天才キッズたちの“検定合格の秘訣”として、新聞やテレビなどでたびたび報じられ、「英語ができる子たちがひそかにやっている学習法」として、多読・多聴が注目されるようになりました。
中高生は、圧倒的に不足している学習時間を補うのが目的
言うまでもなく、読解力やリスニング力などの英語の運用能力は、英語との接触時間に比例して高まります。そして、私たち日本人が、ネイティブと対等にコミュニケーションできる英語力を身につけるには、最低2,400時間程度の英語学習が必要である(※)というのが近頃では定説になっています。
にもかかわらず、小学校、中学校、高校での英語の授業時間をすべて合わせても1,000時間ほどにしかなりません。このように圧倒的に不足している学習時間を補うために、中学校や高校では、補習や夏休みの宿題などに多読・多聴を組み込んでいます。
多読・多聴には、どのような教材を使えばいいの?
ネイティブの小学生向け教科書「Leveled Readers」が人気
では、小学生、中学生、高校生のできる子たちは、「どのような教材」を使って多読・多聴をしているのでしょうか? いろいろな多読・多聴の教材がありますが、中学校や高校でポピュラーなのは、アメリカ人やイギリス人の小学生が、母語である英語を学ぶために学校で使用する「Leveled Readers」(レベルド・リーダーズ)と呼ばれる“教科書”です。
Leveled Readersは英米の教科書会社が出していますが、子どもたちの学年や英語力に合わせて、いくつかのレベルに分けられているのが特徴です。また、本の内容理解を助けるために、カラーのイラストや写真がふんだんに使われているため、「学習(用)絵本」と言う人もいるぐらいです。
最もやさしいレベルは、本文5~6ページほどのとても薄い、見た目が“絵本”のようなものが中心です。内容も、ネイティブの幼稚園児が活字に慣れる練習用の本から始められますので、日本の小学生の子どもたちでも、アルファベットと簡単な単語が読めれば十分チャレンジできます。
レベルが上がるにつれて文章は長くなり、単語や文法も複雑になります。いちばん上のレベルの本では、平均で1冊当たり20ページ、2,500語程度の長さと、日本の標準的な高校入試英語問題の“総語数”を軽く超えます。文法は日本の高校生レベル、語彙は大学入試レベル以上のものも普通に使われています。
「説明文」が語彙の幅を広げる
Leveled Readersはネイティブの小学生が学校で使う教科書なので、童話や民話、小説といった「物語文」(フィクション)だけでなく、偉人の伝記、科学、歴史などの「説明文」(ノンフィクション)もバランスよく含まれています。私たちが国語を勉強するときと同じように、英語でも、物語文だけでなく、幅広いジャンルの説明文に触れることで語彙力が向上します。
大学入試の英語問題や英検®(3級以上)などの検定試験の長文を見ても、出題の中心は物語文ではなく説明文です。また、TOEFL®やTEAPのような大学受験生向けの検定では、物語文はいっさい出題されず、長文はすべて説明文というのが普通です。
ですから、国語と同じように、最初はとっつきやすい童話などの物語文から始め、徐々に説明文へと本の種類を変えていくことが、英語の多読・多聴でも重要です。その点で、説明文が豊富にそろっているLeveled Readersは、理科や社会などの他教科を含む、多くの分野にわたる語彙力を身につけるのに適しています。
「多読・多聴」を長く続けるためには
まずはやさしい本を100冊、読んで聞いてみよう!
一般的に、だいたい100冊を超えた頃から、英語のままの語順で英語を読み、そのまま理解できるようになってくると言われています。100冊を目指して、多読・多聴を続けるためには、どうすればよいのでしょうか?
まず、自分の英語力よりも1段階あるいは2段階ほど低い、最初はページ数も少なく、内容もやさしすぎると感じるぐらいの本から始めるのがポイントです。たとえば、高校生なら、中学生レベルの英語で書かれた本からスタートするぐらいで丁度よいのです。無理してページ数の多い本や難しい本に取り組んでも長続きしません。
さらに、以下は多読・多聴を継続させるコツです。
多読・多聴学習 継続のポイント
辞書をひかない
(英語を英語のまま理解するため)
わからないところは
飛ばす
つまらなければ
途中でやめて
別の本に取り組む
これらをふまえて、さまざまな種類の本の多読・多聴にチャレンジしてみましょう!